探偵部の活動日誌② (4/13)
大貫刑事はしばらく黙考した後、大きく頷き始めた。
「なるほど、どういう経緯かは知らないが彼女が協力してくれたのか」
「御察しの通りです」
彼女とは小原さんのこと。
金本を誘い出した手紙と依頼の手紙に使われていたメモ帳が同一であることは、小原さんのお陰で判明したのだ。
「じゃあ話が早い、まず君のPCを貸してくれ。我々が考えていることがわかるだろう?」
刑事は僕のPCに手を伸ばす。
「わかります。どうぞ」
僕はすんなりとノートPCを渡した。
警察が僕のPCを使って何をするのか。
それは犯人との接触。
警察は犯人の要求通り、白神奈子の居場所を提供する。
そうすれば、犯人は必ずその場所を訪れる。
そこを逮捕するという算段なのだろう。
「白神奈子の居場所を教えて、そこに犯人を誘い込むんですね?」
僕はPCを操作し始めた大貫刑事に尋ねた。
「君はキレる奴だな、その通りだ」
刑事は何やら文章を打ち込んでいる。
「上手くいきますか?」
「もちろんだ。君達が心配することじゃない」
「何かあれば僕たちが手伝いますよ」
白神由基の情報をチラつかせる。
すると鋭い目が僕に向けられた。
背筋がゾクッと震えた。
「警察を馬鹿にしているのかい。 はっきり言ってあげよう。君たちはすぐに手を引いたほうがいい。先日の日曜日、被害者が出た」
そう言ってPCに再び目を落とす。
刑事の迫力に僕は声が出なかった。
被害者……
「その被害者は……全身びしょ濡れだった」
刑事は無感情に言った。
びしょ濡れ……?
……金本と同じだ!
それにしても……
犯人は何を狙っているんだ……?
被害者って誰なんだ……?
僕が何も答えられずにいると、刑事はPCを僕に返してくれた。
「送信したメールは削除させてもらった……なあ、篠崎君」
「は、はい」
「お願いがある。白神由基の手掛かりを教えてくれ、もちろん君が知りたいことは教えてやるから。頼む」
刑事は頭を下げた。
大の大人にそんなことをされると恐縮した。
まさか向こうから交渉を持ちかけてくるとは……
……願ったり叶ったりだ。
僕は刑事の目を見て、大きく頷いた。
この事件の真相に近づくという緊張で、手に汗が滲んだ。