君のためなら (24/26)

翌日の放課後、私は美術室へ向かった。
準備室の扉を開けると、すでに探偵部の3人がいた。



「よう新人!」

山科さんの茶化すような挨拶。

適当に挨拶を交わし、本題に入った。


「これ、ありがとうございました」

私はそう言って、昨日預かっていた「依頼文」のコピーを返した。



「どうだった?何か思い当たることとかなかった?」

篠崎さんが期待の薄そうな口調で尋ねてきた。



「思い当たること、ありました」

勿体をつけて答えた。



「えっ、ホントに!?」




私は万里子とヨっくんの話をした。

笹峰 万里子という友人の初恋の相手の名前がヨシキであること。
依頼文にあったのと同じ漢字であったこと。

そして、名字は白神ではなかったけれど、大貫だったということ。



私の話を聞いた彼らは驚きを隠せない様子だった。
3人で顔を見合わせ、意味ありげな視線を交わしていた。




「でもこれって偶然ですよね?」

私は探るように発言した。




山科さんと日村君は篠崎さんを見る。
篠崎さんは頷き、私を見た。そして口を開く。



「小原さん、君はかなり重要な所に位置する存在だ。大貫という刑事に関してだが、金本の事件直後、こんなことがあった……




大貫刑事がこの探偵部を訪れ、例の依頼文を読んだのだという。

篠崎さん曰く、依頼文を読んだ大貫刑事は、酷く動揺していたらしい。

そのあと慌てて部屋を出て行った。
その様子は尋常じゃない焦りだったそうだ。



ヨっくんの年齢と白神由基の年齢が一致している事も根拠となった。




「今、小原さんの話を聞いて確信したよ。大貫刑事と、この白神姉弟は親子関係だ」

篠崎さんが断言した。


その後も推理が飛び交い、私たちの推理は徐々に形を成してきた。


「大貫」と「白神」。
名字が変わっている点は容易く想像がついた。