君のためなら (20/26)

「殺すつもりはなかった……?突飛な推理だな、どういうことだ?」


「山科の推理通り、日村が目撃した光は目くらましだと思う。そして明らかなのは、これが殺意のない計画的な犯行だという事だ」



しばらく沈黙。
篠崎さんが言ったことをみんな考えている。




「そうか……もし殺意があればナイフか何かで刺し殺せばいい。返り血を浴びたくなければ首を締めればいいはず、だな。でも犯人はそうしなかった」




なるほど、と思った。
手紙で誘い出した事やライトを用意していた事から、犯人が犯行を計画したことは明らか。
単に金本君を殺そうと計画していたなら、もっと簡単な方法を選べたはずということだ。



「でも僕の推理も破綻だらけだ。被害者を水で窒息死させる方法がわからない。トイレの便器に頭を浸けさせる犯人は相当な怪力だ」

篠崎さんは両手を上げて降参のポーズをとった。



「やっぱ俺たちは所詮、高校生だな。これだけの情報じゃわかんねえな」

山科さんは自虐的に笑った。



私と日村君はただ黙って2人の会話を聞いているしかなかった。
名推理なんて出てこない。











私はふと疑問に思ったことを口にした。


「日村君は第一発見者、なんだよね?その日に限ってどうして学校に早く来たの?それともいつも1番早く学校に来てるの?」


学校に1番乗りで登校しなければ、他の誰がが発見していたはず。
それに日村君は金本君にいじめられていたという関係性がある。

何かがあるのではないかと疑問に思ったのだ。



「それは……

日村君は口を開いた。
先輩2人とは違い、たどたどしく話し始めた。