君のためなら (19/26)
「小原さんの証言であった通り、犯人は手紙で金本をトイレに呼び出した。そして、暗い校舎内で強い光を放つライトで目を眩ませた。日村が目撃した光だ」
山科さんは推理を語り始めた。
「その光はもちろん犯人が顔を見られないようにする為のものだ。それから被害者の両手足を縛り、自由を奪った。犯人は被害者の顔を便器の中の水面に押し付け、窒息させた」
こんな推理でどうだろう、と山科さんは他のメンバーに意見を求めた。
篠崎さんが手を挙げる。
「その推理で破綻している部分が2つある。ひとつは両手足をどのように縛ったか。もうひとつは、果たしてその方法で窒息させることができるのかどうか」
「それは……そうだな」
山科さんは悔しそうに口元を曲げる。
「それに、発見された時、両手足は拘束されていなかった。首を絞められた痕もなかった。そうだな?日村」
頷く日村君。
「……なぜこんなに回りくどい殺し方をしたんだろう。俺はそこがわからない」
「でも何か理由があるはずだ」
篠崎さんが再び仕切り直してくれた。
「じゃあこういう推理はどうだろう。犯人に金本を殺すつもりはなかった……というのは」