君のためなら (18/26)
「情報交換なんて言いましたけど、実際大した情報はないんです……先に謝っておきます」
私は彼らをあまり期待させたくなかったので、初めに断っておいた。
「いや、実は僕たちも大した情報はないんだ。こちらこそ巻き込んで悪かった」
篠崎さんがそう言ってきたので、少し安心した。
私たちは所詮、高校生だ。
「でも小原さんがどうして事件に興味を持っているのか気になるな。僕たちの会話を盗み聴きしてたみたいだけど」
「たまたまトイレの前を通りかかったら聞こえてきたのでつい……私も金本君の件で事情聴取を受けたんです」
「そうだったのか。僕たちの中でも日村も事情聴取を受けているんだよ。知っているかもしれないけど、日村が第一発見者なんだ。僕たちは日村の供述を元に事件のことを考えていたんだ」
日村君が第一発見者ということは知っていた。
当日、彼が珍しく多弁になってクラスメイトからの質問に答えていたのを覚えている。
「そうだったんですね。……それで、何かわかったんですか?」
「いやぁ……それが全く」
篠崎さんは頭を掻いた。
「謎は大きく分けると2つ、だな?」
山科さんが口を挟んで篠崎さんに話を振った。
「そう。ひとつは金本武雄の殺害方法。もうひとつは、どうやって金本を殺害現場まで誘い出したのか」
といって篠崎さんは指を2本立てた。
「俺たちの推理では、犯人が被害者と親しかったというのが有力だった」
「でも犯人はまだ捕まっていないところからすると、話はそんなに簡単じゃないらしい」
2つ目の疑問に関しては私が答えを持っている。
その事を包み隠さず話した。
探偵部の3人は真剣な表情で私の話を聞いていた。
「うーん……要約すると、犯人は佐々木みのりさんの私物のメモ帳を使って金本に手紙を書いた。メモ帳には佐々木さんの指紋が付いていたので容疑者となった」
「そうです」
アゴに手を当て、篠崎さんは言葉を続ける。
「そして佐々木さんには金本の死亡時刻、本屋さんに居たというアリバイがあった……そのアリバイ確認の際に小原さんも事情聴取を受けた、と」
私は頷いた。
私がアリバイを証明できたわけではないということも話した。
これでひとつの謎は解けたようだ。
「そうか……じゃあ後は殺害方法だな。さっき日村が現場を再現してくれたわけだけど、俺なりの推理を考えた。聞いてくれ」