君のためなら (17/26)

明か明かと灯っていたライトが消えた。


「それもそうだな」

シノザキさんのあっさりした声。
私はライトの残像でまだ目が見えない。



「あのう、もう入っていいですか?」

準備室の入り口から誰かが入ってくる気配。
恐らく日村君だ。


「あれ……?」


「ん?日村、知り合いか?」


「あ、知り合いというほどでは……同じクラスの小原さんです」


徐々に目が元に戻ってきた。
日村君が私の隣に腰を下ろした。

名前だけの自己紹介をした。

机の向かいには篠崎さんと山科さん。
どちらも3年生。



「小原さん、ごめんね。目、大丈夫?」

先ほどとは打って変わって弱々しい言葉遣いの篠崎さん。
細い体で、顔はよく見ると猿顔だ。


山科さんは髪を刈り上げ、カッパのような髪型をしている。


そしてポッチャリとした日村君。

3人が部員のミステリ研究部だそうだ。



猿顔にカッパにポッチャリ。
このメンツはどこかで……

……西遊記だ。

私は自分の思いつきに頬を緩めてしまった。


「え、僕、何かおかしい事言った?」

と貧相な孫悟空。


「篠崎の顔が面白いんだろ」

皿のない沙悟浄が言う。


「山科さんの髪型もなかなか面白いですよ」

と見たままの猪八戒。




ひとしきり盛り上がった後、篠崎さんが取りまとめるように口を開いた。



「さて、役者もそろったし情報交換を始めよう」





役者もそろった……

あ、そうか。

この3人と私が同じ空間にいると、私にも役が当てはまることに気づき、少し楽しくなった。