君のためなら (16/26)
私はパイプイスに座らされた。
そして今、強い光を放つライトが私の顔を照らしている。
そんなものどこで……
刑事ドラマさながらのシチュエーションだ。
この状況に呆れながら、私は冷静に意見した。
「あの、眩しいんですけど」
「解放して欲しければ、君がなぜ盗み聴きしていたのか理由を話すんだ」
正面からシノザキさんの返事がある。
面倒なことになってしまったと、軽い気持ちで着いてきた事を後悔した。
それでも金本武雄の件について、もっと話を聞きたいという気持ちが勝った。
「いや、私も話したい事が……」
「そうやって時間稼ぎか?上手い言い訳を探そうなんて考えが甘いぞ」
「……は、はい」
……どうやらこの人たちのやり方に合わせる必要があるらしい。
探偵部と名乗るくらいだ。
何か世界観のようなものがあるんだろう。
別に私はここから逃げ出したいわけじゃない。
私は深呼吸をした。
「吐く気になったか」
「……いいえ?吐くわけないじゃない」
「なんだと?」
迫力のある風なシノザキさん。
「じゃあ私を逃がしてくれたら、こちらの事情を話すわ」
私も役になりきり、答える。
……なんの役かはわからないけれど。
「それはもちろんだ。話してくれれば解放する」
「いいえ、違う。もう一度言うわ。私を逃がしてくれたらこちらの事情を話す」
強固な意志を表すため、腕を組んでみる。
「待て、それじゃあ意味がない。君が部屋を出て行ったら君から話が聞けない」
……そりゃあそうでしょ。
大真面目に答えるシノザキさんのセリフに吹きそうになりながら演技を続ける。
「そうね……じゃあこうしましょう。あなた達の持ってる情報と私の情報を交換よ」
「ほう……考えたな」
その時、咳払いが聞こえた。
「なあ、シノザキ。下校時刻も迫ってるし普通に喋らないか?」
もう1人の人が救いの船を出してくれた。