君のためなら (15/26)
「さあ観念するんだ」
尻餅をついた私の前に1人が立ち塞がった。
「おいシノザキ!何してんだよ、確保確保!」
後ろから追いついてきたもう1人が、私の目の前の人に叫ぶ。
私の目の前にいるのがシノザキという人らしい。
もやしの様にひょろっとしている。
「手荒なマネはしたくない。なぜ逃げたんだ?詳しい話を聞きたい。おとなしく着いて来るんだ」
シノザキさんが言った。
私は一瞬逃げようとした。
でも私自身に特に後ろめたいことはないと気付き、ゆっくりとした動作で立ち上がった。
スカートを軽く払う。
金本武雄が死んだ事件には、私も少しは関係がある。
「どこに着いて行けばいいんですか?」
私は堂々と答えた。
「いい子だ、着いてきてくれ」
シノザキさんが階段を下り始めた。
気持ち悪いセリフだなと思いながら、私はそれについて行く。
「ここだ」
到着したのは美術室。
私は身の危険を感じつつも、部屋に入った。
この2人は私を襲ったりできるような体つきじゃない……
美術室の中には準備室がある。
授業中なら先生が控えている部屋だ。
シノザキさんは準備室の扉を開けて入っていった。
「さあ入った入った」
後ろから背中を押されて私は準備室にお邪魔した。
古い本の匂いがした。
先に入っていたシノザキさんが、大袈裟に両手を広げ、またもや臭いセリフを吐いた。
「ようこそ、探偵部へ。事情聴取を始める!」