君のためなら (12/26)
みのりが教室を出て行くまで、私は廊下の窓から校庭を見下ろしていた。
「じゃあ部活行ってくる!また明日ね~」
呑気な声が聞こえた。
みのりは教室を出たようだ。
私は入れ替わるように教室に入った。
何人かの生徒が残っていた。
その中に帰り支度を済ませた甘橋さんが席に座っていた。
私と目が合うと、彼女は微笑んだ。
隣の空いている席に腰を下ろした。
何の話をするんだろ……
「良い感じだね」
甘橋さんは私の緊張を見破ったのか、髪のことを褒めてきた。
私は短くなった自分の髪に手をやった。
「ありがとう」
誰のせいかわかってるの……?
そう思いながらも本題を知りたいがために、素直なふりをしてお礼を言った。
甘橋さんは視線を窓の外に向けた。
すぐに私に向き直る。
「別に仲良くなりたくて助けたわけじゃないの……」
甘橋さんは呟いた。
すぐにみのりの話だと気づく。
「そうなんだ……」
どう答えていいかわからなかった。
「みのりは気に入ってるよ、甘橋さんのこと」
思うことを正直に明かした。
「どちらかというと小原さんと仲良くなりたいって思ってたわ」
甘橋さんは綺麗な形の唇で口元に笑顔を滲ませた。
上目遣いの彼女に同性ながらもドキッとした。
「甘橋さん……話って、何?」
掴み所のない会話に、私は本題を求めて斬り込んだ。