0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (67/91)
「か 返じて下ざい」
ジュリアは涙目のまま会長を見た。自分でも、何を言っているかよく分からない。
「ん?」
「ぞれ 返じて下ざい」
この期に及んで、こんな事を言ったら、それこそ殺される。けど、あれを奪われたら全てが無駄になる。
リュウオウ君の計画が全部終わっちゃう。
「ほう」
怖いけど、超怖いけど。SCMだけでも、取り返さなきゃ。
「ほい」
会長はジュリアの前にSCMを差し出してきた。
「へっ?」
「今日はここまでにしてあげるよ」
練馬会長はニヤリと笑って、ジュリアの頭を撫でる。
決死の覚悟で言った言葉だったけど、会長はあっさりSCMを返してくれた。
拍子抜けする程あっさり。逆に、なんか怖いんですけど。
「勝負は お預けって事で」
修羅場が終わった安心感なのか、単に怖かったからか分からないけど。
こみ上げてくる感情に、ジュリアは口を押さえ、冷たい床に片手を着いてその場で泣いた。
SCMが敗北感で奴隷になる物なら。もし会長がSCMを付けていて、勝負を始めていたなら。
この時、ジュリアは完璧に負けていたんだ。