0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (65/91)

練馬会長は、もう片方の手で卓に置かれたガラスの灰皿を掴む。



灰皿にはジュリアが吸っていたタバコが数本入っていた。



「ふ ふ」



ジュリアは目だけをキョロキョロとさせて、何も言えない。



「ねえ どれ?」



無理!これ無理!超怖い!



「2回言わせないでね」



「あの 会長」



いい加減気付いた周りの人間が会長を呼んだけど、強く止められる人なんてこの場にいる訳がない。



このキャバクラも、このビルの全ても、ジュリアの目の前にいる老王 練馬ヨシムネがルールなんだ。



みんな、ジュリアが何かヘマをしたんだって思ってる。周りの声に応じないまま、会長はジッとジュリアを見ていた。



「ひい ひ」



ジュリアの頬を掴む会長の手が濡れている。



そこで初めて、自分が泣いている事に気付いた。



下半身の力が抜けて、冷めた感覚しか無い。おしっこ漏らしてるかも。



でも言えない。強く目を閉じると、更に涙が溢れる。



リュウオウ君の事、言えないよ。



言ったらリュウオウ君も、おばさんもどうなるか分からないし。



でも言わなきゃ、ジュリアが殺されちゃう。