0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (59/91)
「ハッハー ようジュリアちゃん!」
練馬会長の隣には問題無く着けた。案の定、会長はすでに酔っている。
連れてきた壮年の知人が1人と、いつも一緒にいるプロレスラーみたいなボディーガードも1人。
「お疲れ様でーす!あー 喉渇いた!」
「おう 飲め飲め」
練馬会長の隣に座り、いつもより少しガッツいた姿勢でお酒をあおる。
ボディーガードは、いつも通り会長の指示で別卓に着いている。
会長の知人の壮年や、そっちに着いていた女の子にも話しかけつつ、練馬会長のタバコに火を着けたり。
それを繰り返し、卓の空気をジュリア色に染めていく。
普段の自分が周りから、天然の受け身猛禽(もうきん)類か何かだと思われてる事なんて知っている。
けどジュリアだって、やろうと思えば卓をお祭りムードにだってできるんだから。
「あはは!」
「なにそれー」
「本当ですかー!?」
ジュリアと練馬会長の卓からは、駄菓子みたいに無意味な会話が延々と繰り返される。
みんなが唇とフィルターを酒で濡らし、乾いた喉に甘いお酒を流し込んでいった。
驚いたフリに、喜んだフリ、酔ったフリに、好きになったフリ。
考えた事も無かったけど、この場に真実なんて1つも無いんだった。
えくぼに本音を隠し、イライラする感情を、細めたマブタで無理矢理閉ざす。