0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (55/91)

新しいお店は、前のお店より箱は小さいし、ボーイの教育も微妙、お客の付回しも意味不明。


口が裂けても言っちゃいけない事だけど、客層も若い男の子から、おじいさんまで、何の仕事をしている人かよく分からない人ばかり。


前のお店では自分から自慢気に仕事の話をしてくる人ばかりだったけど、この店に来る人はどこか仕事の話を避けているように思えた。スーツを着ている人なんて今の所まだ見てないし。


ソファは所々破れて、ガムテープで貼っているのには引いた。これって普通なの?


料金も随分安いみたいだし、前の店がAランクならこの店はCランクくらい。


鏡には汚くて狭いトイレの背景が映り、中心にはジュリアがいる。当たり前か。


盛り上げた髪からほつれた毛先の指通りは、とうもろこしのヒゲみたいにバサバサだった。


そろそろエクステも限界になってきたなあ。


本当は美容室も行きたいし、服は未だにセイヤから返ってこないから、新しい服や下着も欲しいけど。


もう1度、鏡の先の自分を見る。



鏡の先に、暗闇で震える小さな背中が見えた気がした。



ジュリア、今いいことをしてるんだ。



生まれて初めて、誰かの為に身を削って動いてるんだ。



そんな気持ちが大きくあった。



ジュリア、今いいことをしてるんだ。




でも本当は、その時のジュリアには、それ以外何も無かったんだ。