0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (52/91)
一重の黒い瞳。大きくないし、キラキラしている訳でもないけど、確かにそこにある力強さ。まるで銃口みたい。
「僕がいる」
あっ、また心がトクンって鳴った。
無表情でそれこそ上から目線だけど、何この安心感。鼻から深呼吸をして、唇から吐く息が熱い。
満たされるっていうか、不安が吹き飛んだっていうか。これもSCMの作用なの?
「力と金が必要だ」
ジュリアの戸惑いに構わず、リュウオウ君はそう続けた。
改めて聞くその言葉に、ハッとする。子供が言うセリフじゃないけど、すごく納得している。
リュウオウ君にとっての力は奴隷なんだ。
直後に、昨日の震える小さな背中を思い出す。無謀な幼さと、純粋過ぎてもろ過ぎる目的と心。
うまくは言えないけど、このままだと彼は汚くて大きな突風に吹き飛ばされて、濡れただけの砂みたいに崩れてしまう。
ジュリアが側にいなきゃ。
ジュリアが側にいなきゃ、この子はダメになる。
もっと彼を見ていたい。彼の側にいたい。
同時にセイヤの事も思い出した。
別れてからまだ大して経っていないのに、もう顔がうまく思い出せない。覚えているのは、髪型とか手の甲とか、くびれとか。
セイヤは。
セイヤはジュリアが必要だったのかな。