0016 葛飾 ジュリア 蛹 編 (41/91)
常に感じる緊張感とは別の、気まずい空気が寒い部屋に漂う。
リュウオウ君はジュリアに顔を向け、唇の端を小指でわずかに伸ばして見せた。
「僕はこのSCMで 練馬を殺ふ」
緊張感の矢先、セリフと仕草のギャップが、ちょっとカワイイと思っちゃった。
奴隷が作れるSCMねえ。
「SCMは奴隷にできるんですよね?」
あ。なんか敬語になっちゃった。
「うん」
ジュリアは立てた人指し指の横に笑顔を添えて、リュウオウ君を見た。
「じゃあ せめて練馬会長を奴隷にしちゃう方向で考えるとか」
人を奴隷にするとかしないとか、漫画みたいな事を自然に話す事も微妙だけど、殺人に比べたらまだマシだと思う。
リュウオウ君はジュリアの提案に対して、何も言わない。少し考える素振りを見せた後、またパソコンに顔を向ける。
部屋にはまたカチカチとキーボードが鳴る音だけが響いた。なんか、怒らせちゃったかな。
気持ちの悪い気まずさはあったけど、恐る恐る乳首の針を取っていいかを聞くと、OKを貰えた。
針を取ってその場から離れて上着を着て、携帯をいじってもリュウオウ君は何も言ってこなかった。洗面台の鏡で肩を見ると、龍と桜の花びらはまだくっきり残っている。
少しカッコいいと思ってしまった。刺青は前から入れたかったんだよなあ。
その後ジュリアがシャワーを浴びた後も、リュウオウ君はパソコンを操作し続ける。
夜になると、いつもより早くリュウオウ君のお母さんは帰ってきて、案の定ジュリアは泣きながら怒られた。
リュウオウ君にも何か言っていたみたいだけど、リュウオウ君はパソコンの前から離れないまま、母親には背中と横顔しか見せなかった。