0004 目黒 マサカズ (22/29)
ルシエは本当に蜘蛛のように、若者をビニールでグルグル巻きにしていた。
しかも、いつのまにか顔を隠す防寒用のマスクをしている。自分だけ卑怯だ。顔を見られた俺は今さら遅い。
「ん゙ー!ん゙ー」
鼻から下のほとんどを縛り付けられた若者は、目だけを見開き必死で声を出す。
俺は左側にそれを感じ、車を運転しながら、頭の中じゃ今さら混乱していた。
周りに人や車がいた様子は無かったが、心臓が口から出るほどの吐き気とドキドキを感じていた。
今朝までルシエのパンツの匂い嗅ぎながら、自慰をしようとしてただけの、穏やかな休日だったのに、今じゃ見ず知らずの若者を車で拉致している。
ルシエのせいで、俺の人生は滅茶苦茶だ。
ハンドルを握る手の、噛まれた場所から血が垂れ流れているのを見ると、涙が出そうになった。
「ん゙ー!ん゙ー」
助手席の若者は、まだ叫ぼうとしている。
ちくしょう!ちくしょう!
俺の人生が!俺の人生が!
何で俺はこんな頭のおかしい女の言うことを聞いちまう!
SCMってなんなんだよ!
これがジャマイカなのかよ!