0004 目黒 マサカズ (21/29)
だが、もちろんあっちも必死だ。
尻から助手席に入るが、空いた腕でドア際を掴み、意地でも車に入ろうとしない。
猿のように暴れる若者だが、ルシエは後部座席から、用意していたビニールテープで助手席に若者を縛り付ける。
初めは先に入った腰あたりを巻き付け、次に俺が押し込んだ頭。
腕を入れた時点でドアを閉め、フロントガラスから車の中でルシエが若者を縛り付けようとしてる様子が見える。
俺はすぐに運転席に戻り、横からさらに若者を抑え付け、開けようとしたドアを閉めたり、ルシエの縛り作業を手伝った。
指示は無かったが、この場ではとにかく必死でルシエをうまくフォローした。
若者が逃げたらまずいのは、百も承知だ。
ルシエと俺の空気を読んだ共同作業で、若者は体中を助手席ごと縛り付けられた。
俺は本能的にすぐに車を出し、対向車線から順路に戻る。
俺が若者の前に現れてから、ここまで約1分の出来事だった。