0004 目黒 マサカズ (17/29)

俺は服を着て、アパートの前の車に乗る。ルシエはてっきり助手席に乗ると思ったが、一瞬助手席のドアの前に立つと、後部座席の方に座ってきた。


「汚ねーなー」


後部座席にあった俺の仕事着や雑誌を、助手席に放り投げる。


「ほら 早く出せよ」


「はい」


ボスッ


ルシエが後部座席から、俺が座る運転席の裏を蹴った。


「だからワンだろ!」


くそ。


「ワン」


ルシエの声は無条件に緊張して、怖くなるんだ。おまけに申し訳ないという気まずさまで感じる。仕事中に上司に怒られるよりも、心にストレスがくる。


車を走らせ始めてからしばらくの間、お互い無言だった。


音楽かラジオでも付けようと思ったが、何をしてもルシエに怒られる気がして運転に集中するしかない。無言は無言で怖く感じる。


俺はバックミラーで、チラっとルシエを見た。


ルシエは助手席の裏を睨んでいる。うお。あの顔、怖え。


すると。


ボスッ!ボスッ!


「おわっ!」


ルシエは突然、助手席の裏を蹴りまくった。俺は思わず声を上げる。


ボスッ!ボスッ!


「なにを」


俺がルシエの突然の行動に、ビビりながらも聞くとルシエは俺を睨んだ。




「お前がここで あたしをレイプしたんだろおおおお!!」




映画やドラマでしか聞いたことしかないような、女の低い叫び声が車の中に響いた。