0014 大田 ユウガ (16/60)
「注射器の中身は劇薬じゃない」
だけどこの感覚、ブドウ糖や食塩水なんて生易しいものでもない。
「はあ 何かの麻酔 ら」
ろれつも回らない中、僕は思ったことを口にした。
「違うわ そんなに私は優しくない」
答えたのはやはり、濡れた声の女だった。
遅効性の毒?麻薬?
「ま 教えないけどね」
後ろの女、メガネの女、もう1人普通のおっさん。
僕の前後にいる、その3人が僕を支えるフリをして、しっかり固定している。
その上、この目眩(めまい)。
ダメだ。全然考えられない。
逃げるビジョンすら浮かばない。
もう逃げられない。
「大丈夫 かなり薄めているから」
薄めれ?
くそ、ひどい気分だ。
「うぶ」
グルグルした景色の中、胃液が喉を焼く。
分かるのは変な薬のせいで、僕は選択ミスをした。
朦朧(もうろう)とする思考の中、僕はポケットの携帯をイジり、リダイヤルからエイアに電話をかけた。