0014 大田 ユウガ (13/60)
仕方ない。
やっぱ⑤の"しゃがんで逃げる"かねえ。
「勝負は ごめんなさい と言ったら負け」
思考の途中で、彼女は勝負の提案をしだした。
ごめんなさいと言ったら奴隷か。
さすがにバカバカしいね。
僕は返事をしないで、頭の中で逃亡のシュミレーションを繰り返していた。
車内は腹と背中が押し潰されるほどのギュウギュウだけど、無理矢理しゃがんで、他の乗客の足の間を突き進む。
無理はあるが、後ろの彼女の体勢もキツイだろう。
素早く逃げる僕に、とっさに注射を射すのは難しいはず。
しゃがめばケツを守れる。
残り4分程度、逃げ切る事ができれば次の駅で降りられる。
僕は口の中のSCMを舌で舐めては押した。
押す度に、歯茎に鋭い痛みが走る。
僕は、今夢中なんだ。
この状況を切り抜ける。
僕は目を瞑り、息を吸う。
「はあ」
そして熱いため息を吐いた。
外はまだ寒いのに、いつの間にか汗が垂れている。
よし。
目を開けた僕は決意する。
勝負は受けない。