0013 品川 ゼロ (52/103)
僕の思考とは別に、現実の少年は車の横まで行ってしまいます。
車のすぐ横まで来て、少年は初めて僕に振り向きました。
何も言わず、僕を見ています。
多分、来いってことだな。
僕は少年の意思を一瞬で理解し、車まで歩き始めました。
たった十数歩の道のりでしたが、時間がゆっくり流れるような緊張があります。
数歩目で、また『 キュイ──ン 』とSCMが鳴りました。
すると同時に、車の中の男がムクリと起きます。
3回目のアラームには、近付く度に鳴るんだと理解し、表には出しませんでしたが、車の中の男が起きた瞬間ビクッと体が止まりました。
まるで、見つかったら殺されるダルマさんが転んだみたいです。
心臓が誰かに殴られているような鼓動の中、車の中の男はまず少年を見ていました。
男の歳は30歳くらいで、メガネをかけています。
体は大きく、髪の毛は短髪です。
車の様子から一瞬ヤクザかと思いましたが、仕事がバリバリできるサラリーマンみたいな雰囲気です。
けど単純に怖い。帰りたい。
むしろ恥ずかしさにも似た感情があります。