0001 港 タキオ (7/19)

ボフッ


すれ違った女の妄想に浸っていると、突然目の前が真っ暗になった。


何が起きたのか、一瞬じゃ分からない。


「うお どうした」


その男は振り向き様、そう言ってきた。


その声で理解した。どうやら僕はボーッとしていて、この男の背中にぶつかったらしい。


「あ いや すみません」


僕は乙女みたいな小さな声と、早口でそう謝った。


歳は同じくらいだが、身長は僕より高いというか、体が大きい。何よりライオンみたいな爆発した頭。


男はそのまま何も言わずに前を歩いていったが、この一瞬の出来事で、僕はくやしくなった。


ライオンみたいな男の風貌にビビった。ぶつかった自分の失敗に後ろめたさを感じ、怖かった。結果リスみたいな小声で僕は謝った。


僕はなんてちっぽけな人間なんだ。


1分前まで、すれ違った女の足を舐める妄想をしていたのに、今俺は地震が起きて、今の出来事がうやむやになればいいと思うほど恥ずかしい。


そんな憂鬱(ゆううつ)な気分のまま、友人と待ち合わせしていたコンビニの前に着いた。


友人はすでに到着し、コンビニの中で立ち読みをしている。