0013 品川 ゼロ (31/103)
僕がまた困った顔をすると、少年は少し黙って遠くに見える工場を眺め、僕に顔を向けて聞いてきました。
「カニ好き?」
カニ?
「え?食べるカニ?」
少年は不機嫌な顔で「他になんかあるの?」と聞いてきました。
いや、思い付かないけど。突然のカニ発言に混乱したんです。
「カニは好きだけど」
僕がそう答えると、少年はまた小難しい話を始めます。
「刺激に対する快感をa過程 刺激に対する慣れや不満をb過程とするんだ」
僕は必死で少年の話に付いていこうと、頭の中で少年の言葉を繰り返しました。
刺激に対する快感がa
刺激に対する不満がb
少年は僕を見ながら続けます。
「じゃあそれをカニに置き換えて カニがおいしいのがa過程で 面倒なカニの甲羅をむく作業をb過程だと考えて」
カニがおいしいのがa
カニの甲羅をむくのがb
あ、ちょっと分かりやすくなった気がする。
「おいしいカニを食べる為に 甲羅をむくでしょ?」
「うん」
僕の思考に、プリプリしたカニの身とその味が浮かびます。
ホカホカのカニの身をポン酢に付けて食べたり、マヨネーズ付けたり。
ああ、カニ食べたくなってきた。