0013 品川 ゼロ (18/103)
こんなカマかけ、映画やドラマでしか見たことありません。
「君は 」
「今 持ってないの?」
僕が何か言おうとしても、少年はさらに聞いてきます。
さっきまでは大人も顔負けの賢さだったけど、人の話を気にしないで話す所は子供らしさを感じさせます。
「いや 今は持ってないよ」
あの器具は家にあります。
僕がそう答えると、少年はまた鼻をクイクイと動かして下を向きました。
何かを考えている様子です。
少年が黙りだしたので、僕は疑問を聞いてみることにしました。
「君は あのおじさんを知ってるの?」
僕がそう聞くと、少年は相変わらず横を向いたまま答えました。
「パパなんだ」
「あ」
少年の答えに、僕は今までの少年の発言や行動のほとんどに納得しました。
なんだか生意気そうな態度も賢い知識も、おじさんの事や渡された物がある事も知ってた事も。
この少年は、あの医者のおじさんの子供だったんだ。
少年が早朝にここにいることも、違和感を感じなくなりました。
同時におじさんの様子を思い出して、少年を気の毒に思いました。