0013 品川 ゼロ (17/103)
「あ ああ 会ったけど」
驚きながらも、僕は正直に答えました。
テレビのニュースになるほど、大きな事件ではないはずだけど。
近所の噂程度に、誰かから聞いたのかな。
「何か 渡されなかった?」
「え?」
なんで、そこまで知ってるんだ。
たしかに医者のおじさんからは、月形の金具を渡されました。
少年は小さな瞳を大きく広げて僕を見ています。
濃い眉毛に、長いまつ毛でキラキラした瞳です。
「あ いや どうして知ってるの?」
「やっぱり 渡されたんだ」
少年は鼻をクイクイと動かし、アゴに指を当てて横を向きます。
「もう 食べた?」
食べた?
医者のおじさんから貰ったのは、無機質な金具と樹脂でできた器具です。間違えても食べ物じゃありません。
「食べる?あれは食べる物なの?」
少年の質問に、疑問で返すと少年は言います。
「やっぱり SCMを貰ったんだ」
えすしーえむ?
意味が分かりませんが、1つ分かった事は、この少年がさっき聞いてきた「食べた?」という質問は、カマをかけていたという事です。