0013 品川 ゼロ (8/103)
一瞬は駆け寄ろうと思いますが、どう見ても不自然な状況に僕は迷いました。
もしかしたら死体かもしれない。
違っても、何か危険な人間かもしれない。面倒かもしれない。
僕が見過ごしても、他の誰かが警察や救急車に電話してくれるかもしれない。
普段はジョギングをする人や、犬の散歩をする人もいますが、その時はたまたま、その道を通る人間はいませんでした。
「あの」
僕は大きめの声で話しかけてみました。
「う」
ちょっと動いて声が出た。
生きてる。
「具合悪いんですか?救急車呼びましょうか?」
僕は手に持った携帯に、110番を打っておきました。
何が起きても通話ボタンを押すだけで、即座に警察に電話ができるようにしました。
自転車を置いて、男に近寄り、なるべく大きな声で話しかけます。
「あの 救急車呼びましょうか」
近くで見る男の様子は壮年で、50代くらいでした。
格好は汚れていましたが、着ている服は高そうなスーツに、乱れた白髪。
おじさん自身の雰囲気も、こんな川原の土手の景色に不釣り合いな、上品な雰囲気でした。