0013 品川 ゼロ (7/103)

頬を凍てつかせる空気から、マフラーで顔を守り、髪の毛の隙間から見える景色は僕に現実を忘れさせてくれます。



ああ。



涙腺は弱いはずじゃないし、普段もそんなに感動しないはずなのに。



人が作ったものには感動しないけど、人間が作れない物っていうのはどうしてこう。



晴れた空を見ると、泣きそうになるほど幸せを感じるんだろう。



人によっては男のくせに女々しい、と思われるかもしれない。



けど、こんな当たり前のことで幸せを感じられる自分は、きっとそれが幸せなんだと思います。



今朝は普段余らない、おいしい菓子パンが貰えたんです。



家に帰って牛乳とそれを食べて寝るのが、その日の楽しみでした。



土手沿いのサイクリングロードを歩いていると、土手の草原に人が寝ているのが見えました。



初めはただ、酔っぱらいかホームレスか、それともジョギング中のおじさんが寝ているだけかと思いました。



けどそれは、土やホコリで汚れ、うつ伏せに倒れた男の人でした。