0012 墨田 ズシオウマル (60/71)
「まるで人間の審判がいて 僕らの会話を聞いているみたいだ」
私はふと、ユウガの戯れ言が気になった。
『審判がいて 僕らの会話を聞いているみたいだ』
私の脳裏に、また世田谷の姿がチラつく。
世田谷。下の名前を何かの書類で見たが、うまく思い出せない。
その書類では、名前はカタカナで表記されていた。
たしか、奴の名前は。
セタガヤ シ
「犬の意思は分からないから 納得しないと負けた事にはならない可能性も考えた」
私の思考に、ユウガの声が入ってきた。
今は奴の話に集中した方が良さそうだ。
「そこで ある程度フェアな勝負にした」
フェアだと?
「勝負は簡単だよ」
机の上には、大きな布に被された、何かがある。
「 早食い だ」
ユウガはそう言って、布を取った。
机の上には、銀の皿が2人分、用意されていた。
テレビで見た事がある。
皿には高級な料理を被せる、大きな銀のフタがしてあった。