0012 墨田 ズシオウマル (39/71)
私がSCMを見つけられなかった訳だ。
エイアは昔から、自身の知識の範疇(はんちゅう)を越える事でも正解を見い出す。
特別賢い訳では無い。
勘に優れ、タイミングに愛された女性なのだ。
「オン!」
「なに!ズシ!?」
彼女はSCMをポケットに入れようとしたが、私は彼女の手にあるSCMを噛んで奪った。
「ちょっと!」
私の牙で、SCMを包む袋がわずかに破ける。
その隙間から、ほのかにあの匂いがした。
世田谷の匂いだ!
間違いない!やはり、出回っているSCMは世田谷が絡んでいる!
「ズシ!」
床に転がったSCMを、エイアは急いで拾い上げる。
「あんたユウガの事が嫌いだもんね」
エイアは大切そうにSCMを手に持ち、片手で私の頭を強く押さえた。
「けどあたし あいつの事 嫌いじゃないんだ」
分かっている。
「助けてって言うから行くね」
いけない、エイア。
何か違う気がするのだ。
罠かも知れない。
「アオン!」
室内では滅多に吠えない私が吠えた。