0012 墨田 ズシオウマル (18/71)
朝起きるとエサがある。
当たり前の幸せに、私は感謝していた。
燃えるゴミを漁る日々から離れた、この生活はいい。
ゼンイチが出してきた固形のドッグフード。
私はそれから顔を背けた。
「はっ?」
ゼンイチはしゃがんだ姿勢で私を見た。
違う。ドッグフードではない。
「オン!」
私は米の前で一鳴きし、ビニールに包まれたインスタント味噌汁をくわえて見せる。
「はあ?犬のくせにねこまんままかよ」
察したゼンイチはため息を吐きながら、渋々味噌汁にご飯を入れた物を作った。
経過は面倒だったが、分かってくれたようだ。
そう。私が食べたいのは、ご飯と味噌汁を混ぜた物だ。
ゼンイチとの暮らしは、平凡に過ぎ去っていった。
そんなある日の夜中、起きたらゼンイチがいなくなっていた。
SCMの効果で、帰ってくる可能性は高いはずだが、私に人間の部屋から出る方法が無かった。