0012 墨田 ズシオウマル (14/71)
近付くにつれて、匂いの先に唐揚げの女がいることに気付く。
血と汗と唾液の匂い。
『 キュイ─ギ─ン 』
3度目の共鳴の先にいたのは、唐揚げの女と見知らぬ男だった。
世田谷の匂いも嫌いだが、この男の匂いも嫌いだ。
どこかで嗅いだ気もするな。
まあいい。それまでの匂いで、男が唐揚げの女を傷付けていたのは分かっていた。
「やんのかコラ!」
叫ぶ男に私は応える。
喉笛を噛み切った方が勝ちだ!
「オン!アオン!」
『 カチッ 』
SCMから音が鳴って、私と男の戦いが繰り広げられた。
こんなに理性を失ったのは、初めてかもしれない。
途中、何人かの人間が乗った車が、私と男の下に来た。
恐らく、唐揚げの女を助けに来たのだろう。
車のドアが空いた瞬間、昔微かに嗅いだ事のあるような匂いを感じる。
だが、今は唐揚げの女を助けるのが先決だった。