0012 墨田 ズシオウマル (11/71)
いい匂いのする女は、私に唐揚げを差し出した。
助かった。私はもう2日、まともにエサを食べていなかったのだ。
私は尻尾を振りながら、女の手のひらにある唐揚げを食べ始めた。
「なつかれたら 面倒だな」
男の一言に、いい匂いのする女の顔が険しくなる。
「ペットショップの子犬は良くて 野良犬はダメなの?」
女はしゃがんだ体勢で、立っている男を見上げながらそう言った。
「いや そういう訳じゃ」
私も元々はペットショップの出身だ。
確かに、道を歩いている野良犬の私と、子犬の時の私では人間の扱いは全然違う。
「こいつ 野良じゃないな」
もう1人の男が、私の首を見ながら言った。
男は私を抱き、向きを変えさせて、女達に私の首を見せた。
体を触られるのは、まあいい。唐揚げの礼もある。
だが首輪は触るな。
「ほら」
「あ 本当だ」
「ずし お う まる?」
「ズシオウマル?長いな」
よく言われる。