0012 墨田 ズシオウマル (10/71)

とある夜、私は目的も無く住宅街を歩いていた。


世田谷を討ち取ろうにも、手掛かりもなく、SCMの反応も無い。


犬の身である自分に、限界を感じていた。


幼少の頃、私はてっきり自分は大人になったら2本足で歩き始めるのだと思い込んでいた。


自身の心が人間と同じであると、今でも疑わないが、大人になっても姿は犬のまま。


人間だと信じ疑わなかった自信に、陰りを感じていた。


人間の言葉を話すことができたら、どれだけ幸せだろうか。


なぜ理解はできるのに、話す事ができない?


その夜、私は人と犬の間の壁に悩み、感傷に浸りながら夜道を歩いていたのだ。


すると、暗い住宅街にさしかかる手前で、向こう側から4人の人間の若者が近付いて来た。


4人はとても酒臭く、泥酔していた。


「あ 犬」


しかも強い香水の臭いもする。


「へえ 野良犬のわりにはおとなしいね」


だが、1人だけ、いい匂いがする女がいた。


私は鼻を鳴らして女に近付く。