0012 墨田 ズシオウマル (5/71)
墨田教授の研究は困難を極めた。
原因の1つに、1人の学徒がいたのだ。
そいつこそ、世田谷と呼ばれる青年だった。
思い出すだけで、くしゃみをする様な体臭。
世田谷は事ある事に墨田教授や皆の意見に反発、反抗し、時には作業を放棄する事もあった。
だが、人格者である墨田教授は、自身の弟子である世田谷を大切にしていた。
私は世田谷が大嫌いだった。
恐らく、他の誰もが世田谷の事を嫌っていた。
他の学徒の協力も手伝い、研究はとうとう最終段階の手前まで行った。
その頃には世田谷も表向き、墨田教授や他の学徒にも素直に従って、SCMの研究を行っていた。
だが私だけが彼の本音を知っている。
私の住まいは、その大学の研究室だった。
研究室で犬を飼う事を大学側は問題視していたが、墨田教授は権威ある人間だった為に、問題は暗黙で終わる。
誰もいない夜中の研究室。
私はいつも通り、毛布の上で寝ていた。
ギイ
すると、不快な匂いと共に世田谷が研究室に入ってきた。