0012 墨田 ズシオウマル (3/71)
朝日に照らされ、キラキラ光る若くて健康な彼女の姿は忘れられない。
甘い匂いに、思わず尻尾を振ってしまった程だ。
エイアと同じ歳くらいの、その女子高生が着ていたのは、エイアの学校とは違う制服だった。
当時、私は悩んだ。
姉のアンジュを探し、会いたい。
だが私の主人は荒川エイアだ。
主人から離れるのは、崇高なる犬の眷属として恥ずべき行為である。
だが私は1つの答えに行き着いた。
私は人間だ。
エイアが教えてくれた。
私にはアンジュという姉がいると。
初めはエイアがアンジュかと思っていたが、エイアはアンジュでは無かった。
私はエイアの下から離れ、アンジュを探す旅に出た。
だが、アンジュの匂いを辿っても、彼女には会えなかった。
彼女は遠い場所に引っ越していたのだ。
あれからもう、数年が経った。
アンジュはすでに学校を卒業しているだろう。
犬の身の私では、彼女がどこに行ったかまでを調べる事は出来なかった。
エイアの下に戻る選択肢もあったが、1度自分から離れた手前、それは絶対に避けるべき選択と判断した。