0011 中央 アタル (126/142)
まずい。
冷や汗をかくという言葉があるが、汗腺が閉じた気分だ。
「形勢逆転ってやつだべ?」
ゼンイチは銃を俺に向ける。
銃自体を横に構え、カッコつけた姿勢だ。映画の見すぎだろ。
コーヒーの缶、着いたままだし。
パーキングは大通りにあるとはいえ、そこは街の中心から少し離れ、人通りが少ない。
おまけに、俺の車の位置はパーキングの奥の方。短時間で人が来るのを望めない場所だった。
普通なら「止めろ」とか「落ち着け」とか言う場面だが、相手が悪い。
ゼンイチみたいに感情的な奴を相手にしていると、何があいつの気に触るか分からん。
足立シヲリも同様の感覚だろう。
俺も彼女も銃口を向けられ、何もできないでいた。
「おい たしか 足立シヲリだったな」
ゼンイチは俺に銃口を向けたまま、足立シヲリを呼んだ。
彼女は助手席側のドアの前で、ゼンイチをただ睨んでいる。
「さっきは よくもぶん殴ってくれたよな」
足立シヲリは相変わらず黙ってゼンイチを見ている。
「靴を舐めて謝れよ」
ゼンイチはそう言いながら、自分の履いているシューズを突き出した。
「舌出して よだれ垂らして 上目づかいでよお」
俺は心臓の鼓動と、喉の渇きを感じながら様子を見ているしかなかった。