0011 中央 アタル (121/142)

「悪かったから離してよ!」


足立シヲリもかなり怒鳴って抵抗しているが、相手の男の肩は太く、刺青も入ってゼンイチや俺ほどじゃないがガタイもいい。


くそ、ゼンイチがいなけりゃ一喝でかっ飛ばすのに。


足立シヲリはこちらに顔だけを向けて、アイコンタクトとアゴで出口を指してていた。


あたしはいいから、ゼンイチを連れて先に行け、ってか。


なんだよ、その献身的な覚悟。


泣きそうだぞお兄ちゃんは。


そうだ。


今日1日の俺にとって、足立シヲリはしっかりした妹みたいだったんだ。


そう思うと急激に守りたくなる。


だが脳裏ではリュウオウの、ゼンイチを奴隷にしろという命令がデカデカと存在する。


ただでさえズシオウマルを取り逃がし、リュウオウはご立腹。ミスも続いている。


今度こそゼンイチを連れて行かなけりゃ、リュウオウが俺達に何をする分からん。


この場での最優先は、ゼンイチを車に連れ込んで束縛することだ。


状況と脳内の緊張感、そして良心によって俺は立ち止まり、躊躇(ちゅうちょ)する。


アウトローな男は足立シヲリを離すどころか、腰に手を回して抱き付き始めた。


何だよクラブって、男はみんな飢えてんのか。


熱気と爆音と人混みの中、足立シヲリと男は近付き過ぎて、パッと見じゃカップルに見えちまう。


ゼンイチはニヤニヤと笑い、その様子を見ながら俺に言う。


「どーすんだよクソメガネ あの女このままだと輪姦コースじゃねーの?」