0011 中央 アタル (120/142)
ゼンイチに突き付けた銃は周りに見えないだろうが、どさくさに紛れてゼンイチが逃げ出す可能性が高い。
俺は肩を組んだフリをして、奴の首をチョークしながら人混みを進み始めた。
ハタから見たらガチホモ並みに仲良く見えるだろうが、実際はお互い隙があったら目ん玉を潰し合うような仲だ。
フロア内は熱気に包まれている。
おまけに俺は冬物のスーツを着て、汗ばんだハゲと肩を組んで歩かなきゃならん。
ゼンイチも地味に力んで抵抗してくる。
足立シヲリは目の前を先導しながら、道を開けてくれていた。
しかし、フロアの真ん中辺りで、1人の若い男が足立シヲリの手を掴む。
「おい!」
爆音でよく聞こえないが、どうやら足立シヲリが変な風に男を押してしまって、男の勘に触ったらしい。
酒に酔っているのか、音や雰囲気に興奮しているのか、男は足立シヲリの両手を掴みだした。
助けたいが、下手に関わるとゼンイチが逃げる可能性がある。
万が一ゼンイチに逃げられたら、こんな人混みで銃をぶっ放せる訳がない。それはゼンイチの望む所だろう。
一難去って、二難にぶち当たった気分だ。