0011 中央 アタル (118/142)

「テメーらあ」


ゼンイチは下を向きながら、ゲロを吐くようにドス低い声でそう言った。


さっきからテメーばっかりだな、こいつは。


銃は俺とゼンイチのデカイ体で死角を作り、足立シヲリも歩く位置を変えながら、うまく銃を隠してくれている。


VipフロアからBarフロアへの階段を降りると、セキュリティのシャツを着たゴツいのが、こちらに近付いてきた。


まずい、大きな音や声を出し過ぎたか。


俺とゼンイチに真っ直ぐ向かい、話しかけようとするセキュリティ。


近くでまじまじと見られたら銃の存在がバレる。


だからってしまう訳にもいかない。


すると、足立シヲリが自ら俺達の前に出てセキュリティに話しかけた。


「この人 悪酔いしてお酒こぼしたりしたんで 外の風当てに行くから」


ゼンイチが泥酔しているという設定で、うまく言い訳して切り抜けてくれたんだ。


ゼンイチが店員に顔を向けて何か言おうとしても、俺は銃口を奴の横腹に突き立て、低い小声で言う。


「何も言うなよ 今撃ったらヘソが増えてゴマの匂いが嗅げなくなるぞ」


ゼンイチはヘソのゴマの匂いを嗅ぐ趣味なんてねえ、と言わんばかりに睨んできたが、反抗する様子は無かった。


店員は不信感を残しつつも、俺達に背中を向ける。とはいえ、この場はなんとか切り抜けたか。


つくづく心臓に悪い日だ。