0011 中央 アタル (100/142)
そこには柵に肘を着き、こちら側のフロアを見ながら談笑する男女が見える。
女は日本人だが、男はスーツを着た黒人だ。
見下されている感はあるが、なるほど。
あそこがVIPのフロアか。
俺はポケットの中のSCMを軽く握った。
歯の間に刺さる金具の部分が、チクリと俺の手のひらを刺激する。
このクラブ内から半径30Mにゼンイチがいるはずだ。
今、俺がSCMを着けたら、ほぼ確実にゼンイチの奴隷になる。
「俺は あそこに入れるのか?」
「一応そういう風には言ってみますけど」
足立シヲリは大きめの声で、俺に近付いてそう言った。
近くに来ると、タバコの匂いに紛れて柑橘(かんきつ)系のいい匂いがする。
匂いが離れたかと思うと、足立シヲリはバーカウンターにいるバーテンに話しかけていた。
足立シヲリの話を聞いたバーテンが耳に着けたトランシーバーに指を当てると、VIPフロアの階段から1人の男が降りてきた。
少し離れた場所でも、男がフラフラと酔っているのがよく分かる。
男は足立シヲリの前まで来ると、すぐに足立シヲリに抱き付いた。
足立シヲリが何か言うと、チラリと俺の方を見てきた。
そして、階段の上に立つスタッフに合図をする。