0011 中央 アタル (97/142)
俺が腕時計から顔を上げ、ふと道路越し向かい側の歩道を見ると。
おいおい嘘だろ。
「ゼンイチだ」
「え?」
広い道路を挟んで、向かい側のビルに入って行くゼンイチの姿が見えた。
似ているだけの可能性もあるが、あいつが着ていた服の色はよく覚えている。
「あそこクラブですよ」
足立シヲリと俺は早歩きで近くの横断歩道に向かいながら、ビルに消えるゼンイチの姿を見続けた。
「クラブ↓?」
「いや クラブ↑です ヒップホップとかレゲエの曲が流れるような」
クラブ↑だと?
ゼンイチはすでにビルの中だが、すぐに俺達もビルの前にたどり着く。
「ゼンイチは確かにここに入った」
しかし、ビルの前にはたくさんの外国人や若者が並んでいた。
どうやら、並ばなければ入れないらしい。
俺が素直に列の後ろに立とうとすると、足立シヲリはクラブの出入口の方に進み始めた。
そして大柄なセキュリティの男と、親しげに話し始める。
1分もしない内に戻ってくると、笑顔で俺に言う。
「良かった 入れます」
「よく行くのか?」
かなりビックリした気持ちを押し殺し、俺はその一言だけを聞いた。
「あ あのスタッフたまたま知り合いで」
知り合いか。
彼氏でもなんでもないが、妙に胸がモヤモヤするな。