0011 中央 アタル (85/142)

足立シヲリがまた携帯をイジろうとしたが、せめてこの流れをきっかけに、まともな話をしなければ。


やはり単刀直入に言うのがいいな。


「いや まあ なんというか」


俺は車を発進させながら、もう1度話しかけた。


「SCMの勝負やリュウオウの為とはいえ 見知らぬ人を轢いた事は 」


「分かってます」


俺の話しを、足立シヲリは途中で遮(さえぎ)った。


いやあ。やっぱり引いてるというか、結構怒ってるな。


「これ今 どこに向かってるんですか?」


足立シヲリが聞いてきたことをきっかけに、大切なことを思い出した。


「ああ そうだ 話しておくべきことがあった」


俺はハンドルの先を見ながら、横顔で足立シヲリに言う。



「俺はゼンイチとの勝負に すでに負けている」



「え?」



彼女が驚いた様子で携帯からこちらを見たのは、横目から見ても分かった。


「あの目黒とかいう男を弾いた罪悪感が引き金で 俺は敗北感を感じちまった」


「もしかして あの目黒って人と同じパターンですか?」


特に目に見えて大きな動揺は感じないが、足立シヲリの声は、わずかに高いものだった。