0011 中央 アタル (84/142)
チラッと横目で足立シヲリを見ても、ただ携帯をイジっている。
なんだか体全体から、話しかけるなオーラが出ている気がする。
とにかく何を考えているか分からない。
車は一応、ゼンイチの家の方面に向かっている。
まだコンビニを出て、たった数分も経っていないが、もっと長い時間に感じるな。
いやあ、まいったな。
どうしたもんか、このヘヴィな空気。
「あ 足立シヲリ」
ちょうど赤信号で車が止まった時に、俺は足立シヲリに話しかけてみることにした。
携帯に向けた顔から、俺を見たのが分かる。
この重い空気を打破するべく、ちょっと面白いことでも言ってみるか。
俺も彼女に顔を向け、目を見た。
そして。
「ずばびよーん」
一瞬の間の後、足立シヲリは「はい?」と聞き返した。
途端に死にたくなるほど恥ずかしくなった。
俺は何を言っている。
いや、一応場を和ませようとしたんだ。
だが、足立シヲリは眉を曲げ、困ったような怒ったような顔をしている。
どうする。
余計おかしな空気になっちまった。
「中央さん 前」
足立シヲリは俺から目をそらし、前を見てそう言った。
「あ ああ」
前を見たら、すでに信号は青だった。
だが俺の心は赤信号の気分だ。