0011 中央 アタル (86/142)

「そう さっきの目黒とゼンイチの話と一緒だ」


新たな主人が30M以内にいない場合、前の主人の縛りは継続する。


足立シヲリもそれを察している様子だった。


「勝負でも待機でもない 保留モードってとこだな」


保留モードである俺の主人の縛りはまだリュウオウだ。


「ゼンイチは逃げたんすか?」


足立シヲリは、特別大きな目をしている訳ではないが、暗がりの車内では見開いた目がよく目立っていた。


「ああ 多分 俺が負けたことに気付かず逃げ続けている」


大方、平気で人を轢いた俺に、さすがにビビったんだろう。


「その場合 どうなるんですか?」


「勝負は終わったが ゼンイチと俺が24時間以内に出会わなければ 両方にペナルティが起きる」


俺は一呼吸、ため息を吐いて続ける。


「そして ゼンイチと出会っても俺は あいつの奴隷になる」


さらに今までも俺はリュウオウの奴隷だ。


どの道に転んでも、地獄だな。


さっきよりは大分平気になったが、改めて考えるとテンションが下がる。


足立シヲリは何も言わない。


「はは まあ そんな感じだ」


俺は口だけで笑うと、胸ポケットからタバコを取り出そうとした。


ああ。


そういえば、もう無かったな。