0011 中央 アタル (73/142)
俺はバックからガムテープを取り出し、男の両腕に巻いた。
「そこまでしなくても」
「うるさい!」
俺が小声だが強い調子そうで言うと、足立シヲリは黙った。
気が付いて暴れてもらっても困る。
早くこの件を処理しなければならん。
ただでさえ、俺はゼンイチに勝負で負けちまったんだ。
これ以上のトラブルが起こる可能性は、全てガムテープで巻き付けてやる。
「はあ はあ」
男はただ荒い息をして苦しい表情をしている。
もしかしたら肋骨も折れてるかもしれない。
俺は男の足を押し込めるようにしまうと、後部座席のドアを閉めた。
そして運転席に戻り、足立シヲリが乗り込んだのを確認してすぐに車を発進させた。
フロントガラスから見える、ライトで照らされた道路には血痕や車の破片など、変わった物は無い。
目に見える証拠は残って無いはずだ。
狭い住宅街の道を走らせながら、フロントミラーで後ろの男を見る。
このアパートの住人か?どうする。どう処理する。
俺は一般人を弾いた上に、勝負に負けた。
負けた。弾いた。
俺の頭の中では、ひたすらその2つの言葉が駆け巡る。
同時に2つの取り返しがつかないことが起きた。