0011 中央 アタル (72/142)

やがて足立シヲリも車から出て来て、ボンネットの男を見る。



「この人 誰ですか?」



知るか。ゼンイチ以外ならそれどころじゃない。



歳は俺より上、35歳前後か。



人違いした原因の1つは、男がゼンイチと同じ坊主頭だったこと。そのぐらいしか分からん。



俺は足立シヲリに何も言わなかった。



言えなかった。



「中央さん!この人 」



足立シヲリは何度も俺を呼んでいたらしい。



俺は何回目かの呼び掛けで、彼女に初めて応えた。



「車に運ぶ」



「え?」



このままにしておくのはまずい。



時間は深夜。



まだ周りに人が来ている気配は無いが、人を跳ねた車の音は辺りに聞こえたはずだ。



とにかくこの場から離れなければいけない。



「後部座席のドアを開けてくれ」



俺は足立シヲリにそう言いながら、男を抱き抱えた。


顔はすり傷で済んでいるが、頭も打ち付けているはずだ。



くそ、左足は折れてる。



腹周りの骨も様子が分からん。見た目はでかいがわりと軽いな。



足立シヲリに後部席のドアを開けさせ、俺は男を車内に入れた。



打ち所が悪かったのか男の意識は無い。荒い呼吸だけ聞こえる。