0011 中央 アタル (70/142)

足立シヲリは助手席に座ったまま、ゆっくりと俺を見る。



「あんた何やってんの!」



彼女の言い方には少しビックリしたが、俺はゼンイチを車で弾(はじ)いた。



だがこの距離と速度なら、死にはしないだろう。



しかもあいつみたいに頑丈なマウンテンウホホなら、せいぜい骨折で済む。



目的は足止めだ。



このまま奴をSCMで奴隷にし、命令を聞くようにすれば社会的な建て前も問題無い。



ドン引きの足立シヲリを車内に残し、俺は何も言わないまま車から降りる。



このままダメージを負ったゼンイチを言いくるめれば、追いかけっこ勝負は俺の勝ち。



直接ぶん殴り合いをするのも覚悟していたが、無駄な労力は無いに越したことはないだろう。



思い付きのカチ込みだが、うまくいったな。



俺は車を半周し、ボンネットのゼンイチを確認しようとした。



だがその時、信じられない事が起きた。




ガタン




アパートの奥で物音が聞こえ、その方向を見ると




アパートの奥から逃げている、弾いたはずのゼンイチの後ろ姿が映った。




俺はとっさに、自分が轢(ひ)いた男を見る。




俺が車で轢いたそいつは




ゼンイチじゃなかった。