0011 中央 アタル (58/142)
「え?けど 」
納得できない様子で足立シヲリはズシオウマルを見る。
しかし、俺が何も言わずに足立シヲリを見ると、彼女は眉に力を込めたまま「わっかりました」と小声で言った。
青年も女も、こちらを見たまま何も言わない。
ズシオウマルは未だに女に尻尾を振り、足元の匂いを嗅いでいる。
「ちぃ」
今はまさに犬だが、怒らせた際のズシオウマルの面倒臭さは、ゼンイチの件でよく知っている。
青年の様子も、ただでズシオウマルを渡す気配じゃない。
無理矢理ズシオウマルを連れて行くにも、リスクが高過ぎる。
頼みの綱の足立シヲリも、本物の飼い主の前では無意味だ。
「すまなかった 君たちの犬とは知らなかったんだ 手を引くから忘れてくれ」
俺がそう言って、後ろを振り向こうとした時。
「おじさん リュウオウって人知ってる?」
後ろを振り返るのを止めた。
このガキ。
リュウオウの名前を出しやがった。
まさかとは思ったが、こいつら。
俺はもう1度、青年と女に顔を向ける。
「お前ら 大田ユウガと荒川エイアか?」
青年も女も、何も答えないがそれが答えだ。
間違いない。
新宿セイヤから聞いた特徴も一致している。
こいつらが、大田ユウガと荒川エイアだ。