0011 中央 アタル (53/142)
この場にいるのはまずい。
今はズシオウマルを連れて帰るのを最優先に考えるべきだ。
「あ」
足立シヲリの声で、俺は夜道の先を見る。
電信柱と電灯が一定の間隔で並ぶ、真っ直ぐな道路の先に、こちら側に向かって歩く人影が見えた。
「グルル」
ズシオウマルは俺に牙を見せ、首の裏で手綱を振り切ろうとする。
俺の体の半分も無いのに、なんだよこの馬力は。
俺が手綱を二重にして手に巻き付けようと、手首を曲げた瞬間。
「ああ!」
足立シヲリの言葉と同時に、ズシオウマルは勢いよく走り出した。
「くそ!」
手綱を巻く拍子に、離しちまった。
しかもズシオウマルのせいで手首をひねった。
タッ タッ タッ タッ
コンクリートで出来た道に、獣の爪が駆ける音が響く。
俺と足立シヲリは、すぐにズシオウマルを追いかける。
ちくしょう!前逃げられた時もこんな感じだった!
これだから犬は!
ズシオウマルが駆ける先に、2人の男女が見える。
すでにあっちも、こちらの様子に気付きつつ歩いて来ていた。