0011 中央 アタル (43/142)

「ほら ズシオウマル覚えてる?唐揚げあげた あたしだよ」



無駄だ。



あいつにそんなものは通用しない。



犬といえど、獣。



侵入してきた俺たちにキバを向くに決まっている。



今ズシオウマルと俺の間には、一触即発の緊張感がある。



種族は違えどオス同士にしか分からない感覚だ。



先に動いた方が負け。



そんな空気だ。



しかしズシオウマルは尻尾をゆっくり振りながら、あっさり足立シヲリに歩み寄ってきた。



「ハッ ハッ」



「は?」



「わあ 覚えててくれたあ?」



ズシオウマルはクンクンと足立シヲリの手のひらを嗅ぎ、足立シヲリはズシオウマルの頭を撫でる。



なんだよこの犬。



プライドとか無いのか?



しかし、俺が一歩立ち位置をずらした瞬間、ピクンと俺を見てきた。



俺が動かずにいると、また足立シヲリに頭を下げる。



心地良さそうに頭を撫でられ、また足立シヲリの膝などにクンクンと鼻を当て始めた。



無邪気な犬を装ってはいるが、俺に対する警戒は解いてない。



ゼンイチとの戦いの時も思ったが、この犬。



人間並みの何かを感じるな。